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feminism matters

英語(とたまに韓国語)のクィア・フェミニズム系記事の翻訳の貯蔵庫。

ジェームズ・ディーン事件後に、いかにポルノ業界は演者の安全を守ることができるか?

セックスワーク 性暴力

原文はこちら。 https://bitchmedia.org/article/look-feminist-porn-and-consent-james-deen

After James Deen, How Can the Porn Industry Keep Performers Safe?
ジェームズ・ディーン事件後に、いかにポルノ業界は演者の安全を守ることができるか?

Lynsey G
2015/12/14

11月28日、ポルノスターでフェミニスト・アクティヴィストのStoyaがツイッターで同じくポルノスターのJames Deenから性的暴行を受けたとツイートし、ポルノを見ている人たちはみな恐怖に息を飲んだ。Deen(Stoyaの元恋人)は、彼の見た目上は女性に優 しく、合意を重視するポルノの出演によって近年人気が急上昇しているスターだ。彼は自分を「フェミニスト」と呼ぶのは拒否したと言われているが、フェミニ スト的なポルノファンの間での彼の人気が、彼をいま地球上でもっとも人気のあるストレート男性のポルノスターの地位に押し上げたと言っていい。Stoya のツイートに続き、ほかにも10人の女性たちが沈黙を破り、Deenを性的暴行、合意の無視などで非難した。そのうち5名は撮影中に暴行を受けたと言って いる。

しかし、これらの暴行やレイプの申し立ては、ポルノ業界内部の人間からすれば驚くことではなかったようだ。Deenの素行に問題があったとは思えないという声も報道されているが、ポルノ産業に関わる多くは、「隣の巨根くん」の良くない噂がついに公になったことに衝撃を受けるというよりは安堵しているように 見える。Deenの親しみやすい世間体の良さは、彼のそこまで秘密ではなかった危険な言動を覆い隠してきたようだ。

なぜポルノ業界の外の人々はこの噂を聞いたことがなかったのか?このモンスターはどのように人の目をこんなにも長い間欺いてきたのだろうか?

教育的、またセックス・ポジティヴなフェミニスト・ポルノを撮ってきた監督のTristan Taorminoは言う。「いま必要なことは、労働環境、構造的不平等、業界のトップが作り、反映させてきた文化の真剣な見直しです。簡単な答えはありま せんが、ポルノ業界のセックス・ワーカーが真に自由な選択をもち、危険から保護されていると言えるようになるためには、多くの変化が必要です。」

同意はどんな状況においても難しい主題ではあるが、とりわけ性行為から収益を生み出すポルノ産業においては複雑な問題だ。女性の演者の供給は需要をはるかにしのいでいるため、何か問題を感じても黙ることを選ぶ女性もいる。人気のあるAV男優であるRyan Drillerは言う。「パフォーマーにとって、撮影中に起きたよくないことを言うのは怖れが伴う。会社がもう二度と使ってくれないかもしれないし、「扱いにくい」というラベルを貼られたら他社にも倦厭される」

評判がかかっているので、とりわけまだ経験の浅い演者たちは、多少気まずさを感じても、監督や共演者の要望をなるべく叶えなければならないというプレッシャーを受ける。すでに引退した演者であるAurora Snow(Deenの疑惑についてThe Daily Beastで語った)は、彼女がまだ現役だった頃のアダルト産業で、監督、エージェント、Deenのような演者が「まだ名の売れておらず、自分を守ってく れるエージェンシーがない経験の浅い新人につけ込んでいた」と語った。Deenの疑惑について語ったKore Peterは、監督、スタッフ、共演者は、「新人ちゃん」に支払う以上のものを得るために彼女が合意した以上のことをさせるのも問題には感じていなかった と語った。Peterが新人だった頃、Deenは撮影中、彼女の合意なくアナルに挿入する前に彼女の首をしめたという。シーンの撮影後のことを振り返り、「スタッフはみんなDeenとハイタッチして、アナルなしの男女のシーンにアナルのシーンを入れるなんていい仕事をしたと言った」とPeterは振り返る。

元AV出演者のAila Janineも、製作スタッフが彼女が望む以上のことをさせようとしてくることを経験した。流されてしまう原因の一つはお金の問題だという。シーンの撮影が計画通りに終わらなければ支払いをしない会社があり、そのような場合演者は歯を食いしばってとにかくシーンを終わらせることになる。あるシー ンの撮影中、「監督が、男性演者のペニスが中に入っているときに、大きなディルドを膣に入れるいわゆる「二輪挿し」のようなことをさせようと私を丸め込もうとしました」とJanineは振り返る。事前に合意していないシーンの撮影を許したくないので、撮影を止めさせたという。「私は性について新しいことを試したり探ったりするためにポルノ業界に入ってきました。だからポルノ業界に反対しているわけではありません。でも、ある種の性行為がより金になるということももちろん知っています。監督は支払うつもりがなかったので、私はやめろと言ったのです」シーン撮影は予定通り進み、彼女は帰宅した。

性行為が仕事であるポルノにおいて、受け入れられる振る舞いとそうではない振る舞いの境界線が曖昧になる人がいるようだ。Deillerはいう。「カメラの前で限界を押し広げようとしている業界や仕事をしていて、どうしてできるかもしれないのに、その限界を突破できるか自分を試さないのか?」こういう雰囲気のとき、この質問に答えるのは難しい。「過激がすでに規範になっているような環境の中で、侵害的な行為というのを定義するものはなんなのか?」 Amber Rayneはthe Daily Beastに、まだ駆け出しだった頃のDeenとのアナルシーンの途中、Deenは彼女の顔を殴り、あまりにも強い力でアヌスに挿入したため、「裂けて流血沙汰に」なったにもかかわらず、監督は撮影を続行したという。怪我の治療のために縫わないといけなかったと。Lily LaBeauはVocativeにDeenが撮影中にKinkドットコムのセットで2度彼女を暴行したという。そのうちの1度は、Deenが彼女をしたたかに殴り、口が開かなくなった。彼女たちによると、セットでの合意の無視は明らかにDeenだけの問題ではない。

舞台裏でカメラが回っていないときも、Deenは恐ろしい脅威だった。Tori Luxはthe Daily Beastに、他の人とシーンを撮り終えた彼女をDeenは誘った。彼女がはっきりとNoと断ると、Deenは彼女の喉元をつかみ、床のマットレスに押さ えつけて無理やりようとし、殴ったという。周りにいた人はただ立ち去るだけだった。Ashley Firesも舞台裏でシャワーを浴びた後、Deenに暴行を受けたという。「彼は私の後ろに来て、股間をあててきました」彼女はすぐさまDeenを「拒否リスト」に加え、彼との仕事をその後拒否し、彼女に起こったことをなるべく多くの人に伝えたという。

演者にとって、合意に関する問題はときに複雑だとKinkドットコムによく出演する演者であるMona Walesはいう。「合意についての問題の一つは、一度もやったことがないことについてどう同意するのか?ということ。やってみないと、自分がどのように 感じるかなんてわかるわけがない。」Aurora Snowがいうように、「AV出演者のリアリティは多くの人にとっては推し量りがたいものです。積極的に、共演者に対して身体的、性的な欲望を見せること は普通のことです。こういう状況で、同意がない状況でも、同意がそこにあるかのように見えるのです。」

多くの演者の「共演拒否リスト」の上位に君臨し、「危険」な男というDeenの評判がいかに見過ごされ、Stoyaが暴行についてツイートするまで「世界で最も人気のあるAV男優」の地位にあり続けたのか、その理由ははっきりしない。彼の業界内での人気もその要因の一部だ。Deenはこれまで2000以上の作 品に出演してきた。プロデューサーは、Deenの長いキャリアの中で、暴行は例外的なものだと思ったのかもしれない。Snowはいう。「Deenと多く共 演したことのある元AV女優として、私は彼のそういう一面を一度も見たことがないということを認めなければなりません。」女優のTasha ReignはBroadlyに「Deenがそんなことをするのを一度も見たことがない」と語った。しかし、彼女は犠牲者に連帯を示すために、予定されていたDeenとの撮影をキャンセルすることに決めた。

Deenの行為が明るみにならなかったもう一つの理由はあまりにもありふれたものだ。Deenは業界の中で非常に力を持っていた。他の多くの業界の場合と 同様、稼げる男性スターは非常に影響力がある。ファンからの人気の高い彼はポルノ会社にとって必需品だった。たとえばLaBeauはVocativに Deenは撮影中に彼女の合意を何度も破ったにもかかわらず、仕事が多く入ってくる彼は現場にいつも現れ、彼女は彼の機嫌を損ねないように丁重に彼に接し ないといけなかったという。Deenは頼り甲斐のある役者でもあり、AV男優に要求される身体的な要求を満たすことができ、多くのプロデューサーに信頼さ れていた。加えて、業界のパブリシストであるErika Iconによれば、AV男優に要求される厳格な身体的基準のために、ストレートの男性ポルノスターはAV女優に比べて常に供給が足りていない状況だとい う。「男性の演者は数が限られていて、常に仕事が入っています」Iconは言う。稼げて、信頼でき、人気のある男優として、Deenは誰もが羨むような地 位にあったために、キャスティングディレクターやプロデューサーたちは、彼の暴行の経歴を見逃した可能性がある。

それぞれの演者も、暴行を受けたことを公にすれば中傷にあう可能性がある。「最近、沈黙を破った女性たちは世間の審判の目にさらされています」Iconは 言う。「世間の多くの人々(一般人、とここでは呼ぶ)はポルノスターであることがどんなことか理解せず、彼女たちが受けるべき同情を示しません。一般人 は、ちょっとのことで業界全体を非難します。」間違っているがあまりにも広まりすぎている、ポルノスターはレイプされえなという考えが、沈黙を破ろうとし ている犠牲者にさらなる困難を抱え込ませる。レイプのサバイバーの語りは、セックスワークのスティグマがない場合であってさえも、しばしば無視されるもの だ。

噂されていたDeenの振る舞いはさらに、多くのポルノ業界内部の人々が指摘したように、ポルノ業界自体が長く軽蔑にさらされてきたために、隠されてし まった可能性がある。Stoyaのプロダクション会社TrenchcoatXの経営パートナーであるKayden Krossはブログに「私たちの業界はすでに…ポルノはレイプであり、合意は疑わしく、ポルノに出たいなんていう女性はいないという主張と闘っています」 と書いた。Deenの暴行は、不幸にも、ポルノは常に搾取でしかありえないと主張する人々に餌を与えるような結果になってしまうかもしれない。

反ポルノ運動はいつでもーそれがフェミニストであれそれ以外であれーポルノ業界をレイプカルチャーの温床としてなじろうと構えているが、ポルノのプロ デューサーたちは、ポルノ撮影において合意はこれまでいつも、神聖なものであったという。Stoyaの告白以降私が話を聞いたポルノ業界の専門家たちは、 Deenが激しく一線を超えることは珍しいことではなかったと口をそろえた。業界内部の人々は、セックス・ワーカーへのスティグマに抗い、強制と暴行はポ ルノにおいては非常にまれだという。元演者としてAlia Janineは「多くの演者は仕事を本当に楽しんでいます。そこにいたいと合意し、私が知っている限りでは、問題にはなったことがありません。…合意なし にはポルノはありえません。これが一番重要なことです。」

演者のMona WalesはBDSMの撮影は非常にハードなので、Kinkはキャスティングディレクターとの面接、インフォーマルな共演者や舞台裏の他の演者との会話、 カメラなしでのディレクターとの議論、撮影ありの合意内容についての交渉、撮影中の確認、撮影後の面接、仕事終了後の機密の面接などを含む、非常に詳細な 合意形成過程をもっているという。Walesはさらに、撮影中の合意の取り消しもKinkではとがめられないと付け加えた。「そういうこともあります。合 意の内容はエスカレートしたり、縮小したりします。撮りながら常に変わっていくものです」Kinkのセットでは、「合意、合意、合意の連続です。何度も何 度も何度も合意を取ります。いくつもの確認事項があるのです。」それでも、Deenのケースではそのプロセスも役に立たなかった。

倫理的なポルノの制作者たちは、すべての出演者が安心して撮影に望めるようにするためのプロセスをもっている。「私は撮影前に演者に面接し、彼らの好み、 その気になるために必要なもの、嫌いなもの、超えてはいけない一線、シーンについての考えなどについて細かい質問をします」とTaorminoはいう。演 者がこの仕事にどんな感情を持っているのかを視聴者が見ることができるように「これらの面接はフィルムの物語の中に含まれるものです。」

Drillerは、彼が仕事をするセットでは、カメラマンやプロデューサーが「それぞれの演者が自分がこれから行うことについて確認するステートメントを 撮影する。シーンを撮った後、またカメラをまわし、プロデューサーは演者に、自分がしたくないことをさせられていないかと聞き、演者が身体的、感情的、精 神的に傷ついていないかを確認する。」撮影中のプロセスにおいてさえも、合意は進行中に確認するのが普通だ。Deillerは合意は神聖なものだと主張す る。「誰かがNoと言った瞬間、それが予期せぬものであっても、仕事と撮影は中断され、問題がないか全員で確認する」という。

LaBeauは、Deenとの共演の経験は単に彼を攻撃するために用いられるべきではなく、業界が演者をより良い方法で守る必要が有ることの証拠と考える べきだと強調する。「Jamesだけが一線を越えたのではありません。」Stoyaの告白以降、インディペンデントのフェミニスト・ポルノ撮影家のMs. Naughtyは「今こそ業界全体が立ち上がって、演者の安全と合意が何よりも最優先であると保証するべく、声を挙げるべきだ」という。

WalesはDeenの暴行の疑惑に関連し、合意の問題について業界全体を巻き込んだ議論が必要だと同意する。「声をあげようとする人がいれば支えなくて はなりません。私たちのコミュニティを教育し、支える必要があります。」彼女は言う。「議論に開かれていることが、良い変化を生み出すために必要だと思い ます。業界の人はすでにそう考えていると思うし、このコミュニティはたいていの場合聞こうとしてくれます。だから第一段階は達成できていると思います。こ の良い習慣を続けていく必要があります。」

SnowとのインタビューでDeenは自分の攻撃的な振る舞いを擁護して言った。「セットに入ったら、その日どんなセックスをしたいかという自分の意見は関係ない。ただ、自分を雇っている会社がどんなセックスを自分に望むのかだけが問題だ。」

しかしWalesは、Deenは作品中でたいがいドミナントの役割を演じていると指摘する。「BDSM撮影でトップの役割を演じる側ならば、あなたは相手 にどれだけのことをさせたいのかということについて境界線を自分で定めないといけません。究極的に、起こったことについて責任を持つのはあなたです。会社 ではなく、あなた。…James Deenは何が起こっているのか聞こうとせず、否定し続けました。」

彼が聞こうと聞くことを拒否しようと、James Deenの経歴についての議論は、最も合意を重視するポルノプロデューサーにとっても、警鐘を鳴らした。

月曜にDeenとの関係を断ったKinkドットコムは「演者の権利章典を見直し、演者が今後安全だと感じられるような変革を行う」と約束した。会社のスポークスパーソンであるMichael StabileはBuzzfeedにKinkは「より明確で、匿名性のある事件を報告する方法」を見つけたいと語っている。WalesはKinkでの意思 決定過程には加わっていないが、彼女は匿名のホットラインを作るか、現場に演者の権利についての相談役を雇うという話が会社内で進んでいると聞いたとい う。Kinkに問い合わせたが返信はこなかった。

AVNとのインタビューでKrossはこれまで「これについての話題はStoyaが予想した以上に大きく広がっています。ネガティヴな話がこれだけ広がっ たこと、私たちは少なくとも良かったのかもしれないと思います。セックス・ワーカーは奪われたり譲渡されたりする商品や資本ではありません」

ポルノ業界が暴行などから演者を守ろうとしている時、ポルノの消費者—とりわけ一度はDeenの作品を楽しんだことがあるであろうフェミニストの消費者は —明確な合意に基づいて作られた作品を購入することで、役割を果たすべきだ。演者のJiz Leeは、消費者は倫理的に製作されたことを確認してポルノを購入するべきだと強く言う。「海賊版の購入が増えると倫理は崩れていきます。」「ポルノのた めにちゃんと支払えというわけではありませんが、それが業界を傷つけ、合意のない状況やそういった演出を生み出すことになるということを理解してくださ い。」

「もし視聴者が、演者がちゃんとした待遇を受けていると知りたいということを声を大にして言えば、業界は応えるでしょう。」Ms. Naughtyはいう。「もしそういう消費者がお金を使ってそういう作品を買えば、倫理的で同意に基づく作品製作へのリアルな変化が起こるはずです。」


by Lynsey G

Lynsey G is a writerly type who focuses on the congruent corners of sex, feminism, porn, and culture. She's written for outlets as diverse as Juggs, McSweeney's, Luna Luna Magazine, Refinery29, Menacing Hedge, and the Doctor T.J. Eckleburg Review. The winner of a Feminist Porn Award for her documentary film, "Consent: Society," she's blogging at LynseyG.com, finishing a graphic novel, and writing a memoir (forthcoming from the Overlook Press, 2017).