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feminism matters

英語(とたまに韓国語)のクィア・フェミニズム系記事の翻訳の貯蔵庫。

もう漫画の世界の女性たちを無視できない2016年へようこそ

Welcome to 2016, when you can't afford to ignore women in comics

もう漫画の世界の女性たちを無視できない2016年へようこそ

Shaenon Garrity
2016年1月8日

原文はこちら。 https://bitchmedia.org/article/welcome-2016-when-you-cant-afford-ignore-women-comics


もしあなたが漫画家でなければ、Angoulêmeを聞いたことがないかもしれません。アメリカの漫画家でさえ全員が知っているわけではありませんから。 しかし、国際的には、Angoulêmeという名前の町でひらかれるAngoulême国際漫画フェスティバルは、世界で最もよく知られた漫画の祭典です。フェスティバルの最も栄誉ある賞、グランプリは、毎年漫画芸術において優れた貢献をした漫画家に毎年送られる一生モノの賞です。

この賞の42年の歴史の中で、グランプリを受賞した女性はたった一人です。フランスの芸術家で編集者のFlorence Cestacです。今年、30名の受賞候補者のリストが発表された時、女性は一人も含まれていませんでした。

漫画業界の中で、承認を求める女性たちはほとんど注目されません。漫画業界の性差別ー出版社のジェンダーバランスの欠如から女性キャラクターの表象、漫画 を売る書店での女性の差別までーはよく知られています。しかし、今年の受賞者リストが公表された後に起こったことは注目に値します。

Angoulêmeフェスティバルの運営者たちがリストを公表するとすぐ、性差別に反対する漫画家の女性たち(Women in Comics Collective Against Sexism. フランス語ではBD Égalité。BDはフランス語でbandes dessinées、つまり漫画の意味)が賞のボイコットを呼びかけました。受賞候補者の一人であり、シリア系フランス人漫画家のRiad Sattoufは辞退を表明しました。続いて、Ghost Worldの作者であるDaniel Clowes、フランスの漫画家のスターであるJoann Sfar、アメリカの漫画家であるBrian Michael Bendisなど、多くの候補者たちが辞退を表明しました。Angoulêmeのリストが公表されてから24時間以内に、グランプリ受賞候補者の3分の1 が辞退したのです。「私はAngoulêmeのボイコットを支持し、今や全く意味のなくなってしまった「名誉」であるグランプリ候補を辞退します。」と Clowsは彼の出版社のFantagraphicのサイトに書きました。

ほんの数年前、漫画業界で名の知れた男性からこのような反応がでてくることは想像もできなかったでしょう。アメリカやヨーロッパでは、漫画賞や出版社のに おいて女性を軽んじることは長く受け入れられてきました。漫画は基本的に「男のもの」だったのです。1999年、The Comics Journalが20世紀の漫画100選を公開した時も、女性はたった5人(4人の作家と1人の編集者)しか含まれていませんでした。2005年、 Hammer博物館とロサンゼルス現代美術館がともに「アメリカ漫画の巨匠たち」という企画展を行った時も、優れた漫画家として選ばれた15人は全て男性でした。漫画が商業ジャンルとしてスタートした当初から、女性は漫画を描いてきたということは何度も繰り返し強調されるべき点です。Rose O’NeillからJackie Ormes, Trina Robbins, Aline Kominsky-Crumb, Lynda Barry, Marjane Satrapi といった20世紀の漫画家の巨匠たち(ここで名前を挙げたのはその一部に過ぎません)は女性です。批評家のTom Spurgeonが彼のブログThe Comic Reporterで書いたように、「受賞者リストを作った人々は歴史を裏切っている。その逆ではない。」

Angoulêmeは、受賞候補者たちの一生モノの重要な賞レースからの辞退に大慌てで対応を迫られました。まず、Angoulêmeフェスティバルの CEOはフランスの新聞ル・モンドに対し、受賞者候補に女性がいないことを正当化し、「不幸にも、漫画の歴史には女性はほとんど出てきません。ルーブルに いけば、そこにだってほとんど女性のアーティストがいないということに気がつくでしょう」そして、フェスティバルは作家のMarjane SatrapiとPosy Simmondsをリストに加えることを発表しました。そして結局、昨日、フェスティバル側は全てをいったん白紙にし、受賞候補者リストを作成することを やめると発表しました。アカデミーのメンバーたちが、誰でも好きな作家に投票ができるようにしたのです。

ゆっくりと、漫画の文化は良い方向に向かっているようです。Angoulêmeの発表への反発は、漫画業界での大御所たちでさえも、簡単に女性を排除し、軽視することはできない新しい時代にいるのだということを示しています。アメリカの主要な漫画賞は、Jill Thompson (Beasts of Burden), Fiona Staples (Saga), Mariko and Jillian Tamaki (This One Summer), Cece Bell (El Deafo), Emily Carroll (Through the Woods)といった女性作家たちが賞を総なめし、Lumberjanesの全て女性の制作チームが最高の賞を得て売り上げも伸ばしています。インディー
ズ漫画の最高の賞であるIgnatz賞では、女性が全てのカテゴリーで賞をとりました。ニューヨークタイムズ誌が発表した2015年のベストセラー漫画の リストは、Raina Telgemeierやその他のヤングアダルト向けの女性のグラフィック小説家たちに占められていました。Telgemeierのグラフィック小説6作品 はすべてNYタイムズのリストに載ったほどです。 ミス・マーベルといった人気タイトルや、女性の雷の神様をフィーチャーしたソーのシリーズなど、女性キャラクターを中心に据えた漫画が昨年のデジタルセー ルスを独占しました。

漫画の世界は女性嫌悪的ですが、この唐突な関心の高まりはプロにもファンにも歓迎されているようです。これはあまりにも頻繁に女性やマイノリティの声を無視し、差別が沈黙のうちにまかりとおり、セクハラや性暴力に言い訳がされてきた業界にとって、進歩の兆しだと言えるでしょう。

今週、漫画業界で地位を得ている人たちがためらわず性差別の問題を指摘したことは重要なことです。ボイコットの支持者たちの多くは、女性を冷遇することは差別的であるだけでなく、無知を晒すことでもあるといいます。Angoulêmeは時代遅れで、自分たちのリストがいかに現代の漫画の世界を代表できていないかを理解できていないのです。

この迅速で断固としたボイコットを広めるのに貢献したのはBD Égalitéです。しかし、それだけでなく、このボイコットに対する反応は、漫画業界の女性たちが、一生懸命働き、問題への関心を広げるために休まず闘い、一部のフランス人男性を除いたあらゆる人々が彼女たちの功績を無視できなくなるような素晴らしい芸術を生み出してきたことの証拠です。