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feminism matters

英語(とたまに韓国語)のクィア・フェミニズム系記事の翻訳の貯蔵庫。

忘れられた戦場:女性の身体と公民権運動

社会運動 性暴力 歴史

A forgotten battleground: Women’s bodies and the civil rights movement

忘れられた戦場:女性の身体と公民権運動

 

Jamia Wilson

2012/9/13

 

原文はこちら。http://www.womenundersiegeproject.org/blog/entry/a-forgotten-battleground-womens-bodies-and-the-civil-rights-movement

 

[Women Under Siegeというプロジェクトのブログの記事なので、最後の方がプロジェクトの広報っぽくなります。]

 

いつも怖いもの知らずの私の母は、何年かに1度、ひどい悪夢にうなされていました。寝ている時に目が冷めて叫び出すほど恐ろしいってどんな怪物なの、私が7歳だった時、母に尋ねました。

 

「ママ、それは偽物よ。ただの夢じゃない。」呼吸が落ち着き、自分がちゃんと安全にベッドの中にいると理解した母は、私の方を向いて言ました。「本物なのよ。夢だったらよかったのにね。いつか、私のおなかを蹴った男のこと、あなたにも話すから。」

 

 

その後、母は夜に眠れなくなる原因を教えてくれました。公民権運動の時代、サウス・カロライナ警察は母を殴り、何度も逮捕し、犬で追いかけ、ホースで放水して攻撃したのでした。

 

私の家族が公民権運動に深いかかわりがあったというのは、子供のころから知識として知っていたものの、母の悪夢の原因になった母の物語は心底恐ろしく感じました。

 

母はたくさん話をしてくれましたが、その中に、[おそらく白人専用の]ランチカウンターに[人種隔離への抗議として?]座っていたために、白人の男に生殖器の周りを何度も蹴られたという話がありました。

 

1968 年、サウス・カロライナの大学コミュニティでの「オレンジバーグの虐殺」事件をなんとか生き延びたトラウマ的経験についても教えてくれました。2月のある 日、人種隔離に抗議する大衆に向けて警察が発砲し、3人が死亡、28人が負傷しました。負傷者のうちの一人は妊婦で、この事件の結果流産することになりま した。

 

母曰く、黒人女性の身体は、公民権運動に反対する側にとって戦場でした。全ての抗議者が攻撃の危険にさらされてい た ものの、女性はとくにターゲットになりやすかったと母ははっきりと言います。母や、母の女性の仲間たちを殴った殺し屋たち(つまり市民と警察官)は、黒人 女性の尊厳を傷つけ、それによって黒人男性の抗議者たちの家父長的な怒りを誘発するために、黒人女性への攻撃を激化させたのだと。

 

こ ういう白人男性は、自分たちが信じる人種とジェンダーの優位性を確固たるものにし、その力を見せつけ、嫌がらせと威嚇によって運動の進展を邪魔するため に、黒人女性への暴力を道具として使ったのです。そして、こういった白人の黒人女性への暴力はほとんど追求されることがなかったため、恐怖による支配は憚 ることなく浸透していったのだと。

 

母の話と、父のいとこで、彼女をレイプしようとした白人看守に抵抗し、殺害した Joan Littleの話を聞いて、公民権運動以前から、黒人女性への暴力が蔓延していたことを知りました。性的な暴行を受けたわけではない母とLittleの話 は違いもありますが、共通しているのは、ふたりとも警察暴力と人種主義的で性差別的な文化に支えられて暴走するシステム化された暴力の犠牲者であるという ことです。

 

家族の話と、Danielle L. McGuireによる画期的な本、『ストリートの暗がりで:黒人女性、レイプ、抵抗—公民権運動の新しい歴史 ローザ・パークスからブラック・パワー誕生 まで』を読み、私はアフリカ系の女性への暴力についての話を記録しておくことの重要性を学びました。 McGuireの本は、[1944年、白人男性6人に誘拐、レイプされ、全員が無罪になった]Recy Taylor, [1959年、4人の白人男性にレイプされ、全員が終身刑となった]Betty Jean Owens, Joan Littleといった黒人女性への「儀式化されたレイプと威嚇」への反対が、いかに黒人コミュニティを動かし、公民権運動につながったのかを明らかにして います。ローザ・パークスやアイダ・B・ウェルズといった黒人女性活動家たちが、レイプに反対し、黒人女性の尊厳のために立ち上がるよう人々を促したので す。

 

この本に出会ったのは、Gloria SteinemがSonja HedgepethとRochelle Saidelによるアンソロジー『ホロコーストのもとでのユダヤ人女性に対する性暴力』という本に影響を受けて、WMC’s Women Under Siegeというプロジェクトを始めたと知ったときでした。WMC’s Women Under Siegeは、性暴力を記録し、分析することで、紛争下で起こったジェンダー化された暴力の原因についての理解を広め、未来にこのような残虐な行為が起こ るのを防ぐために、いかに紛争下において性暴力が用いられるのかを記録するプロジェクトです。

 

プロジェクトのディレク ター Lauren Wolfeとのインタビューで、Steinemは公民権運動の時代の性暴力とホロコースト、そして今日の紛争下での性暴力の間に本質的なつながりがあるこ とを語った。Steinemいわく、「この問題を記録することで、被害者たちが、自分は一人ではなく、自分に落ち度があったわけではないということを知る ことができます。そして、法的救済から教育活動まで、このような被害へ対処するための社会的な制度を考えだすことにもつながります。性暴力が戦争の武器に なっていると指摘することで、それを可視化し、懲罰の対象にするのです。かつて、男性に起こったことは政治問題、女性に起こったことは文化問題とされまし た。前者はみんなの問題として取り組み、解決する必要があり、後者はプライベートで、立ち入り禁止で、不可侵の領域であるとされてきました。性暴力は政治 問題であり、みんなの問題であると指摘することで、このプロジェクトはこの壁を壊します。性暴力もみんなで解決すべき問題だと主張します。」

 

Steinem が強調する性暴力を報告、記録、証言する重要性は増しています。女性や少女をターゲットにした攻撃が、シリアからコンゴ民主共和国まで、世界中の紛争地に おいて文化的、性的、政治的支配を確立するために利用されているのです。残念なことに、公民権運動の時代から何十年も経ったアメリカでも、女性に対する暴 力は蔓延し、「ほんものの」レイプや「無理やりの」レイプなんてあほらしい分類をつくって犠牲者を侮辱し、性暴力の広がりと深刻さを軽んじ、レイプ・カル チャーの維持に加担する政治家さえいます。[おそらく2012年に「ほんものの」レイプなら女性の身体が拒絶反応を起こして妊娠しないはずという失言をし たトッド・エイキン氏のこと。]

 

公民権運動の時代から、進歩もありましたが、有色人種の女性、性暴力、組織化された抵抗 の 物語を私たちはほとんど知らないままです。だからこそ、メディアや政治家、警察が女性に対する暴力を無視したり、被害者を沈黙させて、なかったことにする のに抗い、性暴力の事実を明るみに出し、記録する必要があるのです。

 

正義の実現のために私の母が経験したようなことを、誰も経験するべきではないのです。