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feminism matters

英語(とたまに韓国語)のクィア・フェミニズム系記事の翻訳の貯蔵庫。

白人フェミニズムの挫折

The Failure of White Feminism

白人フェミニズムの挫折

 

Tamara Winfrey Harris

2016/11/16

 

原文はこちら。https://bitchmedia.org/article/some-us-are-brave-0

 

政治経験がなく、数々のひどい振る舞いの過去を持つ、道化のようなリアリティ番組のスターは、目も当てられないほどの女性嫌悪に彩られた大統領選を展開した。彼は、中絶をする女性は「何らかの形の罰」を受けるべきだと言い、再生産の権利に反対してきた過激派の男を副大統領候補に指名した。オバマケアを廃止するとも主張した。それは、ヘルスケアを受ける際に女性が男性に比べて不当な額を請求されない権利を含む、オバマケアの女性への恩恵を取り去るということだ。彼は、授乳する女性を「気持ち悪い」とも言った。女性の「まんこをつかんでやった」と自慢げに話し、彼の暴力的な振る舞いを受けた経験のある女性たちは公に声をあげて自分たちの経験を語った。体型や見た目を持ち出して、女性の政敵を嘲った。男女賃金平等、包括的な有給の産休・育休、子育て、政敵ハラスメントなどについては沈黙を貫いた。

 

そして53%の白人女性が彼に投票した。

 

 

大統領に当選したドナルド・トランプの勝利は、多くの物事の失敗や挫折を象徴している。その中の一つが、白人フェミニズムだ。

 

「白人フェミニズム」として知られるようになってきた主流のジェンダー平等運動は、人格のカルト、資本主義、ストレートで白人で中産階級のアメリカ人女性のニーズの追求という特徴を持つ。女性は男性よりも35%貧困に陥りやすいというのに、貧困の問題は後回しにする。ブラウンや移民女性のニーズは無視し、どうしようもなくアメリカ中心的だ。女性のエンパワーメントという名のもとに、ムスリムの人々の主体性を剥ぎ取る。誰にでも手が届くチャイルドケアよりも「ママ戦争」[訳注:専業主婦かワーキングマザーか、母乳か粉ミルクか、などをめぐる女性の間の論争]にかかりきり。有色の女性やトランス女性が直面している暴力には目もくれない。東西海岸の都市の経験を中心に考え、郊外や田舎に住むあらゆる人種の女性の経験を排除する。ゆえに、私たちが前進していくためには全く役立たずだ。前進のためにはインターセクショナルなフェミニズムと、周縁化された女性こそを中心に置くこと、有色の女性、クィアの女性、貧しい女性を包摂することが必要だ。

 

民主党—アメリカで現実に政権を担える「革新的な党」に最も近い政党—の支持者の間で、当然リベラル派の仲間であると信じられているいくつかのグループがある。女性、有色人種の人々、ゲイ、レズビアン、トランスの人々だ。これらのグループは、保守主義や「古き良き時代」に戻る必要があると言った考えのもとでは、あからさまな性差別、人種主義、ホモフォビアの攻撃を受けることになり、失うものが最も多いからだ。民主党が完璧ではないのと同じぐらい(実際に、全然完璧とは言えないが)、周縁化された人々の平等に向けて実際に仕事をする唯一の主要政党が民主党であるということも事実なのだ。民主党が、その最も忠実な支持者にとって非常に重要な課題(大量投獄、賃金不平等、警察による暴力、トランスの権利など)に取り組むのにぐずぐずしていることも多いのだと付け加えておくが。とにかく、少なくとも4年ごとに、トランプやおぞましいマイク・ペンスのような人間が私たちの権利に手を付けることがないよう、こういったグループは同盟を組むと考えられてきた。理論上、ヒラリー・クリントンが言ったように、私たちは「団結すればするほど強くなる」のだ。

 

今年、94%の黒人女性は民主党候補のヒラリー・クリントンに投票した。68%以上のラテン系の女性もだ。Asian American Election Eve Pollによれば、アジア系アメリカ人女性の79%がアメリカ史上最初の主要政党から出た女性大統領候補に投票したということだ。有色人種の男性もクリントンを支持した。黒人男性の80%、ラテン系男性の62%が彼女に投票した。ネイティヴ・アメリカンのリーダーたちも、LGBTQの有権者もクリントンを支持している。しかし、白人女性はそうではなかった。彼女たちは共和党に投票した。最近の選挙でもずっとそうだったように、女性としての自分たちの利益に反すると思われる行動をとった。

 

どうしてそんなことに?フェミニズムは主流化してきた。エイミー・シューマーは「ヤれる女としての最後の日」を作ったし、レナ・ダナムだってニュースレターを配信してる!部分的にはインターネットのおかげで、より多くの女性がフェミニズムの言葉や、基本的な考え方に触れることが多くなった。しかし、フェミニズムは同時に商業化されてもいて、ビッチ・メディアの創設者Andi Zeislerが著書『私たちはかつてフェミニストだった』の中で指摘したように、「(フェミニズムは)政治から切り離され、媒介され、頑固に個人の経験や自己実現にばかり重点を置くようになった。」つまり、白人女性の一部の個人の経験と自己実現だ。

 

有色人種の女性たちは、長い間、自分たちについての運動でもあるはずのフェミニズムの中で、自分たちが周縁化されている仕方に異議申し立てをしてきた。とりわけ私たち黒人女性は、自分たちが女性のエンパワーメントをやる方法について文句を言われてきた。たとえば、私たちはあえて「フェミニスト」という呼称を使わない。そして選挙前には、黒人女性たちは、ソーシャルメディアで白人女性たちと議論し、白人女性の多くが褒め称える婦人参政権運動家たちは、決して有色人種の女性の味方ではなかったと指摘した。スーザン・B・アンソニー[訳注:アメリカの婦人参政権運動のリーダー]の墓の周りではしゃぐことも、選挙当日に白のパンツスーツを着ることも黒人女性には魅力的には思えなかったが、それでも私たちは投票に行き、どの人口集団よりも高い割合で、女性の利益のために投票した。

 

主流の白人フェミニストはいつも、自分たちを掻き立てるものは全ての女性にとってもそうであると思い込むという致命的な間違いをしてきた。自己陶酔した、非インターセクショナルなフェミニズムは、多くの有色人種の女性の心に響かないが、ここにこそ、革新的な政治についての本当の摩擦がある。それはたいていの白人女性の心にも響いていない、ということだ。トランプの「まんこをつかむ」発言を気にしないどころか、トランプを応援するために、「トランプは自分のまんこをつかんでも構わない」と書かれたTシャツを着てトランプの集会にいた女性たちのことを考えてみてほしい。大統領候補の振る舞いを「男ってそういうもの」と擁護するこういった女性たちは、フェミニズムに魅力をほとんど感じていない。はっきりわけられたジェンダー役割を好み、フェミニズムは男と女の立場を入れ替えようとしているだけだという嘘を信じているからだ。

 

「嘆かわしい人たち」に同情するよう言っているわけではないと理解して欲しい。私はただ、主流のフェミニストたちは、自分と異なる経験をもつ女性たちと対話したほうがいいと指摘しているだけだ。さもなければ、いわゆるリベラルの連合は最も強力な有権者の集団(女性)抜きでやっていかないといけなくなるだろう。白人女性が全体としてリベラルのために投票しないのだから。

 

私たちがあらゆる女性の平等よりもポーズを優先する「白人フェミニズム」を放棄したのは随分昔だ。エイミー・シューマーやレナ・ダナムを拒否し、Alicia GarzaやMoya Baileyのようなフェミニストを応援してきた。どうやって有色の女性たち(そしてクィア女性や貧困層の女性、障害を持つ女性)が女性の利益のための同盟を作り上げてきたか見てみればいい。もしより多くの白人女性が私たちのほうに加われば、革新派の連合はこれ以上ないほど強くなるだろう。

 

 

Tamara Winfrey-Harris is the author of The Sisters Are Alright: Changing the Broken Narrative of Black Women in America.