読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

feminism matters

英語(とたまに韓国語)のクィア・フェミニズム系記事の翻訳の貯蔵庫。

パン・ギムンと同性愛者の人権

[한채윤의 비 온 뒤 무지개] 반기문과 동성애 인권

[ハン・チェユンの雨の後の虹] パン・ギムンと同性愛者の人権

 

2017/1/11

한채윤

 

原文はこちら。

http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/778323.html#csidx94c32bdf2750dfea3d4c69bb17f737d

 

2016年7月、在韓米8軍副司令官に就任したタミー・スミス准将は、在韓米軍初の女性司令官だ。米陸軍の歴史で、カミングアウトした最初の同性愛者の将軍でもある。カミングアウト後、長く付き合っていたパートナーと結婚し、現在ともに韓国で生活している。同性婚を認めていない韓国政府は、タミー・スミス准将カップルにどんな対応をしているのか?以前、偶然スミス准将と会う機会があった。直接尋ねてみると、待遇は異性愛夫婦と変わらないという。アメリカと韓国が結んだ軍事協定で、同性愛者カップルの兵士を差別しないという約束だからである。それを聞いた瞬間、幾つかの疑問が浮かんだ。アメリカ人が韓国で享受している同性愛者としての自由と平等を、なぜ韓国人は自国内で享受することができないのか?今、国防部は軍の規律の緩みやら、戦闘力低下などが、同性愛と何の関係もないということを、自分で、タミー・スミス准将を通じて明らかに示している。それでも、軍の規律が緩むという理由で作られた軍刑法の中の同性愛者差別条項をなぜ削除しないのか?同性愛を倫理と道徳の型にはめて論じようとする傾向は強いが、それは嫌悪と偏見のトリックだ。これは明らかに、国民としての主権、市民としての平等権、人間としての尊厳に関する問題であって、政治が責任を負うべき課題だ。

 

パン・ギムンは、少なくともこの問題だけは誰よりもよく理解しているはずだ。歴代最も無能な事務総長と彼を非難する人でも、彼が在任期間中に成し遂げた業績が「女性と性的少数者の人権向上」であるという点だけは認めるだろう。しかし、唐突に奇妙な点が発見された。振り返ってみると、帰国のちょうど1ヶ月前の2016年12月12日、TV朝鮮で「パン・ギムン、私は同性愛擁護論者ではない」という単独スクープが出た。一瞬驚かされたが、コレは彼の直接の発言ではなく、最側近のイム・ドッキュ国会議員が、そのような言葉を聞いたことがあるというだけの、気の抜けるようなインタビューだった。おそらく帰国前に、予め保守陣営の支持者たちを結集させるために、「同性愛関連の事案について、急進的に進めることはないので安心しろ」というメッセージを発する必要があったのだろう。論争になることが明らかな「同性愛」イシューで予め一歩後退しつつ、同時に、もし問題が発生すれば「誤解だ」と否認するという逃げ道を残しておいたというわけだ。外国の記者たちに「うなぎのように疑惑をすり抜ける」と言われていたことを思い出せば、彼らしい動きとも言える。

 

しかし、このような事前の対策をしても「パン・ギムンは同性愛者の人権擁護者」というレッテルを取り払うことは簡単ではないだろう。事務総長としての任期10年の間、あまりに多くの証拠を自ら残してきたからだ。彼はともかく、韓国史上、同性愛者の人権擁護発言を最も多くした有力者である。非常に熱心にこの課題に取り組んだので、2015年6月26日咲フランシスコで開かれた国連憲章採択70周年記念式典で、パン・ギムン事務総長はアメリカ野津性愛車の人権運動団体である「ハーヴェイ・ミルク財団」から性的少数者の自由と平等のために活動した功労を称えるメダルを受け取ったほどだ。2013年には、ユネスコから発刊された「同性愛嫌悪的ないじめのない学校をつくるために」の韓国語版に、自身の故国である韓国の同性愛者に対する嫌悪と差別を懸念しており、これをなくすために努力したいという主旨の文章も残している。こうしてみると、彼は同性愛者の人権擁護者ではないというのは不可能だ。それでも、万一1ヶ月前のインタビューが事実であるならば、彼の名前の前に「日和見主義者」や「偽善」という修飾語が残ることになるだろう。彼は今、重要な分岐点に立っている。

 

大統領選挙に向けて、人権擁護者としての位置を捨てるならば、私たちは国連事務総長として10年間積み上げた業績を捨ててまで彼が手に入れようとしていることは何なのか考えないといけない。彼が自身の名誉を何と交換するのか、国連事務総長は退任後、加盟国のどんな政府役職も引き受けてはならないとう国連総会決議案さえ振り切って大統領になろうとする隠された理由は何なのかということを。まだ確実なことは言えないが、1つ確かなことがある。ここで説得力ある答えを出せない限り、彼の高い支持率は泡のように消えるということだ。そうでなければ、大統領候補討論会で「だから、私が大統領になると言っているじゃないですか!」と前後の文脈もなく叫んだパク・クネ大統領との違いを探すことは困難だろうから。